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 高齢者のために、よりよい住宅改修


 住宅改修に当たって

(1) 高齢者の身体機能を理解し、住環境の課題を明らかにする
最 初に高齢者本人の身体機能を十分把握することが重要です。しかし、実際は高齢者個人の状況は千差万別であるので、まず、主要な生活行為についての動作を把 握します。このとき、どんな住環境のもとでその動作を行っているのかを必ず調べます。そうすることによって、生活の不便・不自由な点は何か、その原因は何 かを明らかにするとともに、現在の住環境の問題点、課題を明らかにします。
住宅改修は、常に生活全体を眺めながら考えていくことが必要で、このような捉え方をしていけば、自ずと身体機能のさまざまな状態に適合した住宅改修方法が明らかになってきます。

(2) 地域の医療・福祉機器専門家との連携
身 体機能に合わせて改修方針を立てるのは、身体機能についてよく理解できていないと不可能で、理学療法士や作業療法士、時には医師や看護師等の専門家の助言 が必要となります。地域にあるさまざまな専門機関との連携によって改修方針を決定するのが望ましいといえます。この意味で、地域でのネットワークづくりを 進めておくことが必要です。

(3) 住宅改修相談の注意点
高齢者の住宅改修は、しばしば本人不在のまま家族や周辺の関係者の間ですすめられることがありますが、できるかぎり高齢者本人も同席して一つ一つ確認しながらすすめるのが原則です。住宅改修の相談に当たっては、次の点に注意することが必要です。
(i) 生活全体を把握しながら高齢者本人や家族の要望をよく聞く
    現在の生活場面における不便・不自由はなにか、その原因はなにかを明らかにすることによって、住宅改修の方針を検討します。
しかしながら、高齢者本人や家族によっては、相談内容を整理しておらず、何をしてほしいのか要領を得ないこともあるので、相談を受ける側が相談内容の意味を聞き出し、話を要約し、確認しながら進めていくことが必要です。
  (ii) 相談に対応する場合、こちらは指導者でなく援助者・協力者であることを忘れぬように
    高 齢者本人や家族に指示をするのではなく、一緒に考え、アドバイスをするという気持ちが大切です。高齢者本人や家族の相談内容には真剣に関心を示すととも に、必要に応じて説明を加えながらお互いに理解を深め、最終的には住宅改修の提案に対して高齢者本人や家族が決定をするという手順が望ましいといえます。
あくまで、高齢者本人や家族が主役です。
  (iii) 高齢者の身体状況は通常は徐々に、しかし時には急激に変化する
    身体状況の変化は、内的要因あるいは外的要因によって引き起こされますが、この変化は、どちらかといえば悪い方に変化します。
例えば、つたい歩き、杖歩行までを考慮するのか、さらに身体機能が低下した車椅子移動までを想定して改修方針を立てるのかは高齢者本人側の決めることです が、少なくとも本人が意思決定するのに必要なさまざまな条件のもとでの情報を提供しておくことが必要です。

(4) 介護のための配慮
加齢や疾病により身体機能が低下し、生活動作が一人でできなくなった場合には、住宅構造・設備上の配慮とともに、介助者のスペースをとること、福祉用具の活用等を考慮することが必要です。
(i) 介助者のスペースの確保
    最近では、合理性・経済性を重んじるばかりに、各室の面積が小さくなり、介助が必要になった場合に困難な場合が多くなっています。こうした問題は、浴室と便所で多く起こりがちです。
これまでは、浴室・便所は生活の裏の部分と位置づけられ、当面必要最小限の機能を充たせばよいと考えられて、他の部分のしわ寄せで極端に狭くなっていることが普通でした。
しかし、最近の「ゆとりある住生活」が目標となるにつれ、これら浴室・便所の面積が相対的に広くなってきたことは、高齢化対応住宅にとってもよい方向とい えます。例えば、浴室では140cm×180cm(2.5 m2)以上、便所は当初から幅員135cm に設計しておけば問題を解決しやすくなります。
  (ii) 福祉用具の活用
    住宅内で使用する福祉用具とは、例えば階段昇降ができない場合の階段昇降機の設置、浴室への出入りを容易にする入浴用リフト、ベッドから浴そう、便器までの移動を助ける天井走行用リフト、ベッドの側に置くポータブル・トイレ、ポータブル浴槽などがその代表的なものです。
これらをうまく活用すれば、高齢者の自立的な生活を可能にし、生活意欲を盛り立てる一方、介助量の軽減が期待できます。
また、福祉用具を取り付けるためには、幅員を広くするとか構造的な検討が必要であるなど、建築設計上の配慮が必要なものが多くあります。
いずれにしても福祉機器は使い方によっては非常に効果的ですが、住宅設計上からはまず介助スペースを確保することを考え、次に高齢者本人や家族の意向や身 体状況から福祉機器使用の可能性を検討し、それにともなう建築的な配慮を整えていくのがよいでしょう。
なお、高齢者およびその家族のなかには福祉機器類を住宅内に持ち込むことに抵抗感を持つ人もいるので、機器の使用については、高齢者本人がそれを使う意志 があるのかどうかを知るとともに、本人や介助者の操作能力が機器の活用に適するかどうかを確認する必要があります。
特に、本人が望んでも医学的にみて適当でない場合もあるので、福祉機器の使用に当たっては専門家の意見が必要です。

(3) 住宅改修案の作成
住宅改修案を作成する場合には、以上述べた点に留意して行うことが必要ですが、具体的に相談に対応して提案にいたる段階でのポイントを整理してみると、次のようになります。
(i) 医療・保健、福祉、住宅改修の専門家との連携
    高齢者本人やその家族が、現在の身体機能のレベルについて十分認識していないような場合には、まず、これら専門家のアドバイスを受けるようにすすめ、それらについて認識、理解を得た上で具体的な住宅改修の相談に当たります。
  (ii) 将来の身体機能低下に備える
    将 来の身体機能低下に備えて、どの程度あるいはどの範囲までを改修案に考慮するかは、まず、高齢者本人やその家族の意向を尊重するだけでなく、現在の身体機 能レベルのみにこだわらず、将来の可能性を含めて、種々のケースについて幅広い情報を提供して、高齢者本人やその家族がよりよい意思決定をできるようにす ることが肝要です。
  (iii) 工事費見積について
    住宅改修案を最終決定するには、工事費見積を提示しなければなりませんが、そのためには工事費用の心積もりをあらかじめ聞いておくことが必要です。しか し、予定費用では納まらないこともしばしばあるので、そのような場合には予定費用を上回るものも含め、いく通りもの提案を用意してそれぞれの特質を説明 し、選択の幅を広く示すことも必要です。
  (iv) 図面段階での打ち合わせを十分に行う
    住 宅改修案を提示する場合、図面の段階での打ち合わせを十分に行う必要があります。その時には、後で誤解が生じないように、できるだけ丁寧に説明するように しますが、一般には平面図、立面図、断面図等をみても理解できない人が多いので、なるべく見取り図等、あるいは施工例の写真を示すことで理解を深めるのが よいでしょう。展示場などを見学して、現場での打ち合わせができれば、一層分かりやすいといえます。
  (v) 工期について
    工期については、十分につめておく必要があります。特に病院からの退院時期に合わせて住宅リフォームを計画しているときなどは、工事期間が制限されるので、綿密な打ち合わせをする必要があります。
 

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